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プログラム解説3

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2023/02/02

ショパン作曲、ピアノ・ソナタ第3番ロ短調作品58(Piano Sonata No.3 b-minor Op58)

前作のピアノ・ソナタ第2番が作曲されてから5年後の1844年に、ノアンにあるジョルジュ・サンドの住居で作曲され、翌年出版された本作は、ド・ペルテュイ伯爵夫人(Emilie de Perthuis)に献呈された。

本作が作曲された年にはショパンの父ニコラが死去し、その訃報に触れたショパンは悲しみのあまり2週間ほど重病人となったが、その約3ヶ月後に完成させている。

ロベルト・シューマンによって「無理やりくくりつけた」と評された前作とは打って変わって古典的構成美を特徴とし、曲想、規模ともに堂々たる大作である。ピアノ・ソナタ全3曲の中、唯一終楽章を長調で締めくくっている(終結部分のみ)。

難しい言葉の説明は割愛。

■第1楽章
提示部、下行音型からの、和音上昇、第一主題。マエストーソ。
このマエストーソは、ベートーベン、ラフマニノフなどのものとは異なる。あくまで、繊細かつ優雅に。
繊細なマエストーソとは?課題である。
テクニカルなパッセージを経て、美しい第二主題。ショパンが極めたピアノに於ける歌の極地がここにある。対位法的な展開部、マエストーソの中にも、調性的な曖昧さ、浮遊感。
晩年のノクターン、バラード、バルカローレあたりで好んで用いられたポリフォニー、帰結する先は再現部。
ただ、再現部は第二主題から始まる。提示部ニ長調で奏でられた歌が、ロ短調の同主調ロ長調へ。シャープ五つを従えた響きのなんと複雑で美しいことか。
そのまま、提示部と同じ流れを築き、コーダで滝のようなアルペジオ下行。第1楽章の幕を閉じる。

■第2楽章
疾風怒濤の右手、いや違う、あくまで爽やかな風のような右手。左手が鋭いリズムを刻む。
優雅な右手に、左手のアクセント。中間部は美しいメロディとほぼコラールとも取れる伴奏。
ユニゾンの導きで爽やかな風が吹き始める。

■第3楽章
決然と始められた導入部から、ノクターン風のメロディへ。左手は付点のリズムで支配されている。
中間部の神秘さ。テーマに戻る前の極限までのディミヌエンド。再度登場するテーマは、左手が3連符で支配されている。

■第4楽章
ショパン作曲の全曲の中で、最も完成度が高い。6/8拍子の堂々たるフィナーレ。
ロンドの形式で、同じテーマが3度出てくるが、伴奏音型の違いから、どれも新鮮である。
星々がきらめくかの如く、速いパッセージがちりばめられ、マエストーソで締めくくる。締めくくりはBメジャーである。
優雅で、繊細で、いわゆる線の細いショパンだが、このフィナーレに関しては、ピアノを鳴らし切る。
低音の響きは、ラフマニノフのそれを超える。

、、、と、弾ければ死んでもいい。

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